「まだ結婚や妊娠なんて具体的じゃない」「パートナーもいないし」 そう感じる20代・30代の方も多いかもしれません。一方で、キャリアを築くにも、パートナーとの未来をはぐくむにも、その土台となるのは健康です。今回は20代・30代のみなさんにこそ知っておいてもらいたいプレコンセプションケアについて解説します。

若い人にこそ必要なプレコンセプションケア

いま、「プレコンセプションケア」が世界的に注目されています。性別や将来の妊娠の希望に関わらず、妊娠・出産を含めたライフデザインや将来の健康のために健康管理を行うことです。プレコンセプションケアを行うと、さまざまなメリットが期待できます。

プレコンセプションケアによるメリット「妊娠のしやすさ」

たとえば、プレコンセプションケアは妊娠のしやすさに影響します。たばこを吸っている女性と吸っていない女性を比べると、吸っている女性はそうでない女性と比べ、不妊になるリスクが1.6倍高くなることが明らかになっています(1)。また男性の肥満が不妊のリスクを高める可能性も示唆されています(2)。

プレコンセプションケアによるメリット「赤ちゃんの健康」

妊娠のしやすさだけでなく、生まれてくる赤ちゃんの健康にとってもプレコンセプションケアは重要です。1,336組の日本人女性と赤ちゃんを観察した研究では、妊娠前にやせていた女性から生まれた赤ちゃんは、普通体型の女性から生まれた赤ちゃんと比べて1.86倍、基準よりも小さく生まれる確率が高くなっていました(3)。こうして小さく生まれた赤ちゃんは将来、生活習慣病になりやすいと言われています。

プレコンセプションケアによるメリット「将来の健康維持」

プレコンセプションケアは将来の健康維持にも大きく影響します。女性ホルモンは月経周期のコントロールだけでなく、骨を強くする働きもあります。もしいま月経が数か月止まっているのなら、女性ホルモンが十分に働いていないことが考えられます。すると骨を強くする作用も十分に働かなくなります。女性は閉経するとさらに骨が弱くなるため、若いうちから骨が弱い状態が続くと、高齢になってからの骨折のリスクがさらに高くなります(4)。

プレコンセプションケアで実施する3つのこと

これまで紹介したように、プレコンセプションケアを行うことで、性別や将来の妊娠希望の有無に関わらず、さまざまなメリットを享受することができます。ここからは具体的にどのようなことを実施するのかを見ていきましょう。

①ライフデザインを描く

妊娠のしやすさは年齢の影響を大きく受けるため、妊娠希望がある方は、「いつであれば妊娠しても大丈夫か」などを考えておくことが大切です。妊娠希望がない方も、年齢によってかかりやすい病気があったり、親の介護が必要になる時期があったり、ライフステージによってさまざまな健康リスクに見舞われます。そういったものを先に把握しておくことで、たとえば検診を手厚くしたり、親と介護について事前に話し合っておいたり、対策を立てることができます。

②必要な検査・治療・ケアを受ける

妊娠中に感染することで、赤ちゃんの病気のリスクが高まるものがあります。そしてその中には、予防接種で防げるものもたくさんあります。ただし風疹などのワクチンは接種前1か月間、接種後2か月間は妊娠を避ける必要があります。将来の妊娠を希望する方は妊活を始める数か月前には予防接種が必要かの検査(抗体の有無を確認する検査)を受けるとよいでしょう。

③ライフスタイルを整える

プレコンセプションケアのメリットでもお伝えした通り、喫煙、やせ、肥満だけでなく、飲酒、栄養、運動など、妊娠・出産に影響を与えるライフスタイルは多岐にわたります。またこれらは、妊娠・出産に限らず、生涯の健康維持のために必要なことです。少しずつ、一つずつでよいので、ライフスタイルを整えていくことが大切です。

専門家からのアドバイス

プレコンセプションケアは一見すると妊娠・出産のためのケアと捉えられがちです。でも本来は、キャリアを追求したい時期、パートナーとの関係を深めたい時期、それぞれのタイミングで自分が選んだ人生を歩むために、体のコンディションを整えておくことがプレコンセプションケアの本質です。あなたが望む「家族の形」や「生き方」を実現するために、まずはご自身の体と向き合うことから始めてみましょう。


引用・参考文献

(1)Augood, C., Duckitt, K., & Templeton, A. A. (1998). Smoking and female infertility: a systematic review and meta-analysis. Human reproduction (Oxford, England), 13(6), 1532–1539. https://doi.org/10.1093/humrep/13.6.1532

(2)Hammoud, A. O., Gibson, M., Peterson, C. M., Meikle, A. W., & Carrell, D. T. (2008). Impact of male obesity on infertility: a critical review of the current literature. Fertility and sterility, 90(4), 897–904. https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2008.08.026

(3)Murai, U., Nomura, K., Kido, M., Takeuchi, T., Sugimoto, M., & Rahman, M. (2017). Pre-pregnancy body mass index as a predictor of low birth weight infants in Japan. Asia Pacific journal of clinical nutrition, 26(3), 434–437. https://doi.org/10.6133/apjcn.032016.11

(4)こども家庭庁. (2026). プレコンサポーターTEXTBOOK. プレコンセプションケア・ポータルサイト. https://precon.cfa.go.jp/precon-supporter/#kouza(2026年2月10日閲覧)