「低用量ピル」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか? 「避妊のためのもの」という印象が強いかもしれませんが、それだけではありません。ぜひ自分らしく過ごすためのツールとしても活用してもらいたいです。今回は低用量ピルがもたらす避妊以外の効果と、正しく知っておきたい血栓症のリスクについて解説します。
「排卵を休ませる」ことが、将来の健康を守る
女性の身体では、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が変動しながら分泌されることで、排卵や生理が起きています。低用量ピルはこの2つのホルモンを適切なバランスで配合しており、飲むことで脳が「ホルモンは分泌しなくても、すでに十分に足りている」と錯覚を起こします。こうしてホルモンの変動が抑えられることで、子宮内膜が厚くなるのを抑えられ、排卵が一時的にストップします。この変化は避妊だけでなく、さまざまなメリットにつながります。

生理痛や月経困難症の改善
ピルで子宮内膜が厚くなるのを抑えることで、子宮内膜から分泌される痛みを誘発する物質「プロスタグランジン」の産生も抑えられます。
月経前症候群(PMS)の改善
排卵に伴う急激なホルモン変動がなくなるため、イライラ、抑うつ、不安感といった感情の波が穏やかになります。通常は排卵後に起こるプロゲステロンの増加もなくなるため、むくみや胸の張りなども軽減します。生理前のニキビに効果を発揮する低用量ピルもあります。
疾病リスクの低減
一生のうちで経験する生理の回数をみると、現代の女性はかつての約9倍、約450回以上に増えています。生理回数の増加は子宮内膜症や子宮筋腫などのリスクを高めることが知られています(1)。低用量ピルを長期的に服用することで、これらのリスクが下がることがわかっています。
数値で見る血栓症リスク
しかし、低用量ピルにも副作用があります。最も気をつけたいのが血栓症です。血栓症とは、血管に血の塊ができる病気で、最悪の場合は命に関わることもあります。一方で、ピル服用によるリスクは、妊娠中や産後と比較すれば格段に低いもので、過度に心配する必要はありません。
1万人あたりの血栓症発症数(2)
- ピルを服用していない人:1〜5人
- ピルを服用している人:3〜9人
- 妊娠中の人:5〜20人
- 産後12週以内の人:40〜65人
内服中は定期的に医師の診察や検査を受け、血栓症の初期症状である「ACHES」を感じたら、直ちに服用を中止して受診しましょう。
血栓症の初期症状(ACHES)
- Abdominal pain:激しい腹痛
- Chest pain:激しい胸痛、息苦しさ
- Headache:激しい頭痛、めまい
- Eye problems:見えにくい、視野が欠ける
- Severe leg pain:ふくらはぎの痛み、むくみ
専門家からのアドバイス
ピルは魔法の薬ではありませんが、あなたのキャリアや生活を「生理による制限」から解放してくれるサポーターになれるかもしれません。大切なのは、「がまんしない」こと。つらい症状があれば、まずは婦人科・産婦人科の医師に相談しましょう。
※編集部より
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引用・参考文献
(1)厚生労働省. (n.d.). 女性ホルモンとライフステージ. 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ.(2026年1月26日アクセス)
(2) 日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会(編).(2023).『産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023』
