「ダイエットを頑張っていたら、生理が来なくなった」「健康診断で『やせ気味』と言われたけれど、特に困っていない」——。日本の20代女性の5人に1人が「やせ」に該当することがわかっています(1)。一方で、やせていることはさまざまな健康リスクをもたらします。今回は、やせが排卵や将来の健康に与える影響と、自分の身体を守るための考え方を解説します。
「やせ」の状態が続くと排卵が止まりやすくなる
医学的に「やせ」とされるのは身長と体重の関係を示す体格指数(BMI)が18.5未満の状態です。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算することができます。やせの状態が続くと、月経不順や無月経が起こりやすくなります。これは「視床下部性無月経」と呼ばれ、強いダイエットや過度な運動などをきっかけに起こります(2)。
私たちの脳には「視床下部」という、ホルモン分泌を司る司令塔があります。視床下部は身体のエネルギーが不足している状態を察知すると、「いまは妊娠に適さない」と判断し、排卵を促すホルモンの分泌を低下させます。その結果、卵巣は排卵の指示を受け取れなくなり、生理も止まってしまいます。 生命を維持することが優先され、生殖機能が後回しになるのです。排卵が止まれば、当然、妊娠もしにくくなります。
生理が止まると、骨が弱くなることがある
排卵が止まると、女性ホルモンの一つである「エストロゲン」の分泌も低下します。エストロゲンは妊娠に関わるだけでなく、骨を強く保つ働きも担っています。そのため、若い頃に長く生理が止まっていた人は、本来であれば骨量が増えるはずの時期に、骨量が十分に増えないまま成人します。女性は閉経するとさらにエストロゲンが減り、骨がもろくなります。若い頃に骨量を蓄えられなかった人は、高齢になってから骨折しやすく、要介護状態につながるリスクも高くなります(3)。「いま、生理が来ていない」ことは、20代の問題だけではなく、80代の自分の生活にもつながっているのです。
生まれてくる赤ちゃんへの影響
やせの影響は、将来生まれてくる赤ちゃんにも及びます。1,336組の母子を対象とした研究では、妊娠前にやせていた女性から生まれた赤ちゃんは、普通体型の女性から生まれた赤ちゃんと比べて1.86倍、低出生体重児(2,500g未満で生まれる赤ちゃん)になるリスクが高いことがわかりました(4)。低出生体重児は、大人になってから糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりやすいことが知られています。ご自身の身体のことだけでなく、将来の家族の健康にもつながる選択として、いまの体型を見つめてみる価値があります。
「体重」ではなく「身体の声」を聞く

体重の数字に一喜一憂するのではなく、身体が出しているサインに耳を傾けてみましょう。
- 生理が3か月以上来ていない、または周期がバラバラ
- 疲れやすい、寒がりになった
- 髪が抜けやすい、肌が荒れやすい
- 食事を抜くことが当たり前になっている
こうしたサインがある人は、一度婦人科を受診してみてください。特に3か月以上生理が止まっている場合は、早めの相談をおすすめします。食事については、極端な制限をするのではなく、1日2回以上は主食(握りこぶし1個程度)・主菜(片手のひら1杯分程度)・副菜(両手のひらいっぱい程度)が揃った食事を摂ることを目指してみてください。
専門家からのアドバイス
「やせていること」が美徳とされる空気の中で生きていると、体重を増やすことに不安を覚えるかもしれません。けれどあなたの身体は、いまの自分も未来のあなたも、将来生まれてくるかもしれない赤ちゃんも、ずっと支えていく大切な土台です。数字ではなく、身体の機能が健やかであることに、価値を置いてみませんか?
※編集部より
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引用・参考文献
(1) 厚生労働省. (2024). 令和4年国民健康・栄養調査結果の概要. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66279.html
(2) 日本産科婦人科学会, 日本産婦人科医会(編). (2023). 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023.
(3) こども家庭庁. (2026). プレコンサポーターTEXTBOOK. プレコンセプションケア・ポータルサイト. https://precon.cfa.go.jp/precon-supporter/#kouza(2026年5月5日閲覧)
(4)Murai, U., Nomura, K., Kido, M., Takeuchi, T., Sugimoto, M., & Rahman, M. (2017). Pre-pregnancy body mass index as a predictor of low birth weight infants in Japan. Asia Pacific journal of clinical nutrition, 26(3), 434–437. https://doi.org/10.6133/apjcn.032016.11
