「プレコンセプションケア(以下:プレコン)」は、「妊娠や妊活の前に始める健康設計」です。
いま現在、妊娠を意識していなくても、将来の妊娠や生涯健康を見据えて、自分の身体や心の状態、生活習慣を整えるための医学的・行動的アプローチです。
妊娠可能な年齢のすべての人にとって、プレコンは自分を整えるための重要なケアとなります。


① なぜ「妊娠前」に始めるべき?

赤ちゃんの発育は妊娠のごく初期、妊娠4〜5週目にはすでに始まっており、妊娠判明前からの準備が重要です。
また、やせや肥満、貧血・血圧・ホルモン異常などのリスクが、流産や先天異常、早産や妊娠合併症率を高めることも分かっています。

また定期的なプレコンは妊娠・出産だけでなく「長く健康に働き続けるため」にも重要です。


② 主な検査項目とそれぞれの意義

項目意義リスク情報
血液検査(鉄分・葉酸・糖代謝・甲状腺など)基礎的体調/栄養状態貧血や甲状腺異常、糖尿病リスク把握
甲状腺ホルモン(TSH・FT4)排卵・流産リスクの可視化ホルモン異常が妊娠・出産に影響
STD検査(クラミジア・淋菌など)感染による不妊・早産予防無症状でも影響あり
AMH検査卵巣の“予備能”評価卵子数減少リスクの早期把握
BMI・体重・体脂肪率栄養バランス・体重管理やせすぎ・肥満による胎児への影響

さらに避妊希望者には適切な方法、感染対策、ワクチン(風疹・HPV)接種歴確認も含むのが理想的なプレコンです。


③ 生活習慣の見直し4ステップ

  1. 栄養の見直し
     葉酸400μg、鉄・カルシウム・タンパク質を意識し、加工食品や糖質過多は控える。
  2. 適度な運動と睡眠
     ウォーキングやストレッチを習慣化し、自律神経やホルモンバランスを整える。
  3. メンタルケア・ストレス対策
     過剰ストレスはホルモンや月経に影響。信頼できる相手と話す、自分なりのリラックス法を。
  4. 禁煙・節酒
     妊娠前からの習慣が、将来の胎児の健康にも影響。生活全体に踏み込んだケアが重要。

④ 地域や自治体の取り組みも活用

現在、全国の自治体でもプレコンセプションケアを重視した独自の支援が広がっています。

東京都:プレコンゼミの開催

東京都では、若い世代向けにプレコンセプションケアの知識普及を目的とした「プレコンゼミ」を開催しています。
このゼミは、産婦人科医や助産師などの専門職による講義やワークショップを通じて、以下のようなテーマを学べる内容となっています:

  • 月経や排卵の基礎知識
  • 不妊のリスク要因と早期対策
  • 栄養・運動・メンタルケアの重要性
  • 自分の身体と将来設計の関係性

特に、都内の大学生や20〜30代の働く女性が主な対象となっており、“妊娠する・しないに関係なく自分の健康を考えるきっかけ”として評価されています。

また、参加者には生活習慣記録シートや、AMH検査の紹介、小冊子なども配布され、今後のアクションにつながる内容となっています。
プレコンゼミは「プレママ予備校」として、教育的役割を果たしながら、妊娠準備やキャリア選択の判断力を支えるモデルとして注目されています。


⑤ まとめ&今日からできるアクション

  • まずは「検査してみる」:血液検査・AMH・STDなどを受ける
  • 自分の生活を見直す:栄養・運動・睡眠・ストレスケア
  • 避妊やワクチン、パートナーとの話し合いも意識
  • 自治体や婦人科の相談窓口も活用

プレコンを始めることで、将来妊娠したときに「知らなかった…」という後悔のリスクを減らし、より安心できる自分と未来の赤ちゃんのための準備につながります。